Gallary


「渚歌謡曼荼羅」〜渚ようこデヴュー20周年記念祝祭〜

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10月7日(金)
会場・四谷区民ホール

新宿区内藤町87番地

東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑」2番出口より徒歩5分

http://www.shinjuku.hall-info.jp/pc/event_yotsuya.html


開場・18:30
開演・19:00


料金・6000円(税込)全席指定


出演:渚ようこ


スペシャルゲスト:
横山剣(クレイジーケンバンド)
三上寛
山谷初男
山崎春美
エロチック・トロワ(ソワレ&エルナフェラガ〜モ)


演奏・花園臨界実験所
(ギター・ベンジャミン・オイカワ
ベース・的場慎太郎
キーボード、ピアノ・たけやん(鍵盤屋)
ドラム・長谷革ナオヤ
フルート・鈴木和美)


躍り子・デリシャスウィートス


照明 :成瀬陽一(ファーストペンギン)
音響 :リンキーディンク
舞台監督:實方知巳
舞台美術:後藤レイコ


ヘアーメイク:加藤リーヌ
ウィッグ:ダイアナ・エクストラバガンザ
ヘッドドレス:Tommy(Chapon)


宣伝美術:町口覚(マッチアンドカンパニー)
広報:吉田プロモーション
制作宣伝協力:ポスターハリス・カンパニー

プロデューサー:笹目浩之(ポスターハリス・カンパニー)

チケット取り扱い
ローソンチケット
http://l-tike.com
Lコード35853
0570-000-407(オペレーター)ローソン、ミニストップ各店舗(店内Loppi)
ゴールデン街・汀(20:00以降)03-3202-4567

企画・製作:Sound・Of・Elegance
お問い合わせ:ポスターハリス・カンパニー
03-5456-9160(平日10:00-19:00)

歌謡曲を愛し続け、その神髄を唄い続ける唄い手・渚ようこのデビュー20周年記念リサイタル。
これまで、数々のミュージシャンやアーティストとの出会いによって変幻自在に創り上げてきた「歌謡宇宙」を体現するステージとなる。
バックダンサーにはパフォーマンス集団・デリシャスウィートス、ハード・ロキッシュで骨太な花園臨界実験所の演奏で自身のオリジナルとカバーを唄いまくる。スペシャルゲストに、渚の敬愛する、(クレージーケンバンドの横山剣)三上寛、山谷初男、山崎春美、エロチック・トロワ(ソワレ&エルナ・フェラガ〜モ)をゲストに迎え、ジャンルや枠組みを超えた華麗なるステージを展開する。


「新宿アウトロウショー・五悪人色不異空篇〜渚ようこリサイタル2014」



「荒野の渚ようこ〜渚ようこリサイタル2013」



DVD「実録・新宿ゲバゲバリサイタル」



ニューアルバム発売!!

渚ようこ  ゴールデン歌謡・第1集 さすらいのギター

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●レーベル :Sound ・Of・ Elegance
●発売日 : 2012年1月
●品番 : SOE1013
●価格 : 2100 円(税抜)
●仕様 : CD 1枚組
●作品紹介 :渚ようこの4年ぶりのスタジオ録音盤。アレンジャーにザ・シロップ、ホット・ハニーバニー・ストンパーズのリーダーの松石ゲルを迎え、歌謡ソウルのカバーとオリジナルスキャット曲による魅惑のゴールデンアルバム。
セクシージャンボ70S・津々井まりの「悪なあなた」、大信田礼子の唄った、上村一夫の劇画「同棲時代」の映画の主題歌、ベンチャーズや小山ルミで知られる「さすらいのギター」、渚のライヴの定番になっている中川レオの「カモネギ音頭」、日活ロマンポルノの女優、潤まり(潤ますみ)のやさぐれ歌謡「新小岩から亀戸へ」、作者不詳の「ネリカンブルース」をアレンジし、新宿に捧げるオマージュとして蘇らせた「荒野のブルース」に加え、松石のオリジナルによる山下毅夫ばりのスキャットを2曲を収録。
昭和40年代の歌謡曲、ジャズロック、和製グルーヴィサウンドが現代に蘇る一枚。

ジャケット・ブックレットに使われた写真は、2011年2月に神楽坂のギャラリーartdish

で行われた上村一夫の原画展「渚の部屋」開催時に沢渡朔氏によって、撮り下ろされたもの。
 
1・悪なあなた           作詞 山上路夫  作曲 村井邦彦  編曲 松石ゲル
2・同棲時代            作詞 上村一夫  作曲 都倉俊一  編曲 松石ゲル
3・華麗なる倦怠(スキャット)   作曲 松石ゲル   編曲 松石ゲル            
4・さすらいのギター     作詞・作曲 J.リーブ・カインド 訳詞 千家和也 編曲 松石ゲル
5・カモネギ音頭       作詞 吉岡オサム  作曲 了瑛頁  編曲 松石ゲル
6・新小岩から亀戸へ    作詞 山口晴男  作曲 水上雅夫  編曲 松石ゲル
7・ 幻の女(スキャット)        作曲 松石ゲル 編曲 松石ゲル 
8・荒野のブルース       作詞 内田漣美  作曲 不詳    編曲 松石ゲル

コモエスタ八重樫さんから素敵な解説をいただきました★

 

渚ようこ、4年ぶりとなる完全スタジオ録音盤が登場いたしました。                

渚ようこは歌います、、、 長年のファンのために。

渚ようこは歌います、、、 新しく彼女の歌に魅せられた人達に。          

渚ようこは歌います、、、このアルバムを聞く全ての人に向けて。          

今回はザ・シロップの松石ゲルをアレンジャーに迎え、 歌謡曲からジャズ・ロック/ソウル、懐かしさと新しいさがドッキング!華麗なる世界がくりひろげられます。

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曲目解説 

1 悪なあなた

 「セクシージャンボ’70」こと津々井まりのデビュー曲「人魚の恋」のB面に収められた名曲。歌も演奏もまさに「昭和グルーブ歌謡決定版!」といったところでしょうか。バックの全面弾きまくりのリードギターや、たまに聞こえてくる極悪ファズギターで踊るあなたの腰の動きも一段と激しくなる事でしょう。カラオケは完全なジャズ・グルーブと言えますね。

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2 同棲時代

 上村一夫さんのジャケットが素敵だった大信田礼子と都倉俊一カップルの作品から。フレンチ・ボッサのたたずまいは一瞬「男と女」を連想、素敵なパリの香りを感じさせてくれます。しかし同時にリズムボックスの音色が8トラックのカラオケマシーンの木目のボディやスナックの紫色のソファーが新鮮だった昭和40年代へとあなたを誘います。

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3 華麗なる倦怠

 「むせび泣く」と言えば「サックス」。日本歌謡界とサム・ザ・マン・テイラーの関係に思いをよせる間もなく、スキャットとボサのリズムが気怠く流れてきます。どこかエキゾチックな香りも見逃せません。まるでゴールデン・ハーフのマリアがTV「大岡越前」の町娘役でシリアスな演技をみせたシーンに流れた山下毅雄の曲のよう、、、といったらお分かりかな?

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4 さすらいのギター

 哀愁の北欧エレキ・バンド、ザ・サウンズの名曲は原題「満州ビート」。元々は大昔のロシアのワルツだったとの事。ヴェンチャーズによって強烈なビート・ナンバーになったのですが、千家和也の詞がつけられた、その日から昭和歌謡グルーブへとなったそうです。「ビート・ポップス」で踊っていたいた少女、小山ルミはこの曲で大人の歌手へと変身したのです。そして今度はルンバ・ボレーロに!村上龍もビッックリの仕上がりです。

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5 カモネギ音頭

 中川レオや平野レミなどが歌った超マニアな曲。ここでは再びご機嫌な昭和グルーブ歌謡となって登場いたしました。ワウワウ・ギターとホーンのリフにしびれる人も多い事でしょう。ジミー竹内のレコードよりエキサイトしたドラムのフィルもいかしてます。渚ようこの最近のステージでも奇妙な振り付けと共にファンにはお馴染みの曲ですね。伸びのある歌い回しはレオ風ですが、水前寺清子(江利チエミとも言える)風レミ盤も聞いてみては如何かな。

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6 新小岩から亀戸へ

 潤まりが歌った酒場を流れ流れていった女の歌、16才で新小岩、17才で山谷と凄過ぎる人生ですね。オリジナルは日吉ミミ的歌声とミディアムなテンポが印象的な作品でした。ここではイントロの歌謡ブルース的エレキ・ギターに始まり、テンポアップしてからは、ぐっとファンキーに展開していく意欲的なサウンドになっています。それに答える渚ようこのソウルフルな歌声もぐっと魅力的、、、と思いません?

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7 幻の女

 突き抜けるようなスキャット! 一瞬、プログレバンド「ルネッサンス」の名曲「プロローグ」でのアニー・ハズラムのスキャットを連想してしまった私です。しかし、ご安心を!こちらはミデアムなファンキーロックとして展開します。2分そこそこの曲ですが渚ようこの新しい面を聞く事ができます。

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8 荒野のブルース

 歌にフランジャー風エフェクト、バックにはフルート、これはキング・クリムゾンの影響でしょうか?再びプログレと思いきや「ネリカンブルース」の新宿版とは驚きです。元々替え歌が多く作られた作者不明のこの歌。今度は「 ジュク」の彷徨人達を「 ジュク」を愛する女が歌います。エレキ・ギターが泣きスネアドラムが叫ぶ、そんな中から聞こえてくる渚ようこの歌と語り。あなたは何を感じましたか、、、「ジュク」そして都会の孤独という荒野は見えてきましたか?

コモエスタ八重樫・音楽関係家(おんがくかんけいか)

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渚の部屋・速報

               

ミニ画集「渚の女」

 

原画展の図録的ミニ画集「渚の女」販売中!

 

神楽坂artdishにて。

会場は上村一夫さんの描いたセーラー服を着たマリリン・モンロー

と70年代のヤングコミックの表紙で埋め尽くされています。

上村さんのお嬢様の汀さんや友人たちに手伝っていただいて

手作りの上村一夫さんのお部屋が出来ました。

 

 

 

 

             「渚の部屋」原画展用に新作Tシャツを作っていただきました。

                          
             その名も「密猟記T」。

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             そして、こちらは「股旅T」謎のアウトローの後ろ姿が

               今回の原画展のあちこちに出没します。

                        どちらも会場で販売いたします。


森山大道「NAGISA」展~宇野亜喜良ライブペインティング、渚ようこライブ・レポート~2010・5.23(日)銀座 BLD GALLERY

渚ようこライブ&宇野亜喜良ライヴペインティング

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☆無事終了いたしました☆
 
宇野さんのお顔がブレていますが、シュールレアリスムにつき、お許し下さいませ。
 
昨晩は、決め事を何もしていなかったのに、三時間以上も宇野さん、ピエールさん、シベール、私のセットは続きました。時々、森山さんが写真を撮りに出て来られたり、私も唄いながらそんな皆さんに見入ってしまったり、ワインを飲み過ぎて歌詞を忘れてしまったりと、気のむくままに過ぎてゆく楽しい時間・・・
 
不思議な愛に包まれた空間でした☆
 
なんだか夏の夜の野外コンサートのような感じもあり、スピリチュアルな宇宙遊泳のような感じもあり、今も思考が溶けています。
 
こんなにも素敵な夜を体験できることに心から感謝したいと思います。
 
私の心と身体を司る精霊様たちにも忘れずに☆
 
宇野さんが壁画を描かれたバー・ルタンで森山さんに撮っていただいた写真がさらに宇野さんの手で大変身!
 
森山さんもいつになく、素早い身のこなしで宇野さんが描かれているお姿を、たくさん撮られていました★
 
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雨の中、ギャラリーに到着すると宇野さんがシルクスクリーンのボスターのためのイラストを書いてくださっておりました。
 
故郷の生まれた家がなくなってしまった跡地に降り積もる雪の上に寝そべっている私に幻の妖精さんが語りかけてくるようです。
 
ピエールとシベール
 
本日の演奏をしてくれる男達をご紹介。高橋ピエール氏と坪内和夫氏(通称・シベール)
 
ピエールさんとはだいぶ長くなりました。あちこち修羅場も経験しつつ、歌舞伎町のグランドキャバレー、新宿コマ劇場のリサイタルなど、ここ1番は必ずピエールさとん。ピエールさんのギターは変幻自在。リハーサルやっても私もピエールさんも全く変わってしまいます。
 
さて、シベールは函館から出てきて1年という得体の知れぬ男ですが、「シベールの日曜日」というバンドをやっているシュールレアリスト。
 
「爆音!爆音!」と言っちゃいましたが、今夜はまた違う面を見せてくれました。
 
バンド名はフランス映画「シベールの日曜日」から。なんと登場人物も「ピエール」と「シベール」・・・偶然か運命か・・・
 
シベールが初めて書いてくれたオリジナル「NAGISA」も唄いました★
 
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(リハーサル風景とお化粧タイム)
 
なぜか、実存の話に・・・
 
宇野さんとお話ししてると話題が尽きなくて、楽しいひととき。
 
ふいに、絵を描きはじめると真剣なまなざし。
 
ふと手を止めて、椅子に座り私たちの唄と演奏に聴き入ってくれたり・・・
 
急に宇野さんが「ほら。。渚さんが【実存主義】にブチ当たった時の話・・・」と話しだされ、ついつい私もかつての苛酷な日々の果てに【実存】という言葉にブチ当たった話をしてしまいました。しかも偶然にそのことに宇野さん自身が深く関わっていたのが、とても不思議なのです・・・
 
先程、録音したテープを聴いてみたら、サルトルの嘔吐のことやら、宇野さんの知ってる意外なオネエ言葉にまつわる話、出会いの話など、延々40分以上話していたのですね・・・皆様、足が痛かったりと大変でしたでしょうに、お付き合いいただいてありがとうございました。
 
それでも、宇野さんは楽しそうに言うのです。
 
「寝てる時に吐かなくてよかったですね・・・詰まっちゃいますから・・」
「僕が去年ら結城座のお芝居に参加した時、男を五人くらい引き連れてきたんだけど、あの人たちみんな女性だったんだね」興味しんしんな宇野さんでした。
 
そして私は、再び【ク・ク・ルクク・パロマ】を唄いはじめました。
 
死んだ女の子に鳩になって会いにいく男の話。
 
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森山さんの魔法と宇野さんの魔法
 
なんと・・・素敵な!
 
私の唄っている間に、ルタンで撮っていただいた写真が大変身。
 
宇野さんが、「赤い部分、誰か塗りたい人いませんか?」と言ってくださって、お友達のイラストレーター・篠崎真紀さんが参加してくださいました★
 
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みんな夢の中で、うっとりしてます
 
嬉しそうにニッコリ笑ってますよ!とかつて汀の月曜日の女だった、あやこさんが撮ってくれました。
 
あやこさんはすでに一女のお母様ですが、もうすぐ二人めのお子様が生まれるということで、今夜の音楽がイイ胎教になるといいな★
 
時間を忘れてしまうほど甘美なひとときでありました。
 
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海は大きなみんなの涙
 
寺山修司さんが作詞された伊東きよ子さんの「涙のびんづめ」より。
 
なみだ・・・泪・・涙・・・
 
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 美しい調べの一夜
 
イベント終了後も熱狂醒めやらず、ピエールさんとシベールの旋律は続きます。
 
お客様も、その調べに触発されてか、作品や宇野さんや私をバチバチバチバチ撮影!
 
「まるで記者会見のようだね」と笑いながら、そんなみなさんをこちら側からパチリと撮影。
 
お客様に押されながらも二人の演奏は23:00近くまで続きました★
 
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狂熱のデュエット!先日の実況録音があまりにも臨場感たっぷりなので、音源化したいと聴き入っています。
 
二人の痺れるようなギターが暴れながら美しく続いていきます。
 
お客様から聞いたのですが、静かな曲でも歯軋りして震えているピエールさんはギターを弾きながら小さい声で「シベール、来い」と呟いていたそうです。離れた場所で弾いていたシベールにもビシビシ伝わっていたとか・・・
 
良き出会いに、なんだかとても嬉しくなってしまいました★
 
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祝祭のあとの静けさ・・・
 
興奮と陶酔が醒めやらず・・・まだ夢の中にいます・・・
 
森山さん、宇野さん、ピエールさん、シベールさん、長澤さん、スタッフの皆さん、三時間以上のステージにお付き合いいただいたお客様に、心から御礼申し上げます。
 
本当にありがとうございました★
 
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コマ劇場レポート「その夜、新宿コマ劇場は渚ようこを優しく包んだ。 」

その夜、新宿コマ劇場は渚ようこを優しく包んだ。
文:川勝正幸

1.伝え聞く、大いなる助走。
2008年10月4日、渚ようこ新宿コマ劇場公演『新宿ゲバゲバリサイタル』へ行った。 劇場のオープンは1956年で、僕と同い歳なれど、52年近い人生の中で2度目のコマだ。前回はYMO『WINTER LIVE』(81)であった。彼らは、北島三郎(おやじ)らが特別公演を開く「演歌の殿堂」へ、テクノポップが侵入する異化効果を狙っていた。

しかし、渚は、ジャッキー吉川が経営する六本木(ギロッポン)のクラブの門を叩き、挫折することから「平成の歌謡歌手」としてのキャリアをスタートした女だ。しかも、03年、新宿ゴールデン街にバー<汀(なぎさ)>を出し、ママとなる。似合い過ぎます! とはいえ、デビュー12周年にあたり、念願のコマ公演を、年末で閉館してしまう前に滑り込みで、レコード会社などに頼らずに渚個人で、インディペンデントで開催すると聞くと、期待だけでなく、不安もいっぱいなわけで。

2.誰もが、「昭和にワープ!」だ。
心配は杞憂であった。 昭和歌謡経由とおぼしきヤングあり、新宿ゴールデン街人脈のナイスミドルあり、国籍性別不明なピープルあり。ロビーは老若男女ドラアグクイーンで足の踏み場もなく、ところどころ覗く、煮染めたような朱色の絨毯がなんか落ち着く。

早めにSS席1万円(記念グッズつき)を予約したおかげで、ステージが驚くほど近い。 サミー前田のキャッチーなDJで場内があたたまったところで、緞帳が上がり、会場は「昭和にワープ!」した。 もはや渚の持ち歌と言っても過言ではない「新宿マドモアゼル」(オリジナル=歌:チコとビーグルス/作詞:橋本淳/作曲:筒美京平/69年)を踊る<デリシャスウィートス>は、振付だけでなく、体型そのものが昭和30年代のニュース映像から飛び出てきたかのよう。 バンドは一見ノーマルかと思いきや、バンマスの渡辺勝さんはワウでビートを刻んでいく。元・<はちみつぱい>というキャリアからの予想を裏切る、ロック魂・ミーツ・歌謡曲なグルーヴに身も心も揺さぶられる。

お次は、「新宿の女」(オリジナル=歌:藤圭子/作詞:石坂まさを/作曲:みずの稔・石坂まさを/69年)のカヴァー。コマに敬意を表しての、新宿繋がりか。 「コマの舞台に立っているのに、落ち着いている」的なのMCに、渚より緊張していた観客の肩の力も抜ける。 そして、渚が”平成サイケ歌謡の女王”の名を欲しいままにした初期の代表曲「サイケでいこう」(作詞・作曲:あいさとう/96年)、ハプニングス・フォーの日本語カヴァーでおなじみの「アリゲーターブーガルー」(オリジナル=ルー・ドナルドソン/67年)とステージのサイケデリック度が増量したと思いきや、江利チエミの日本語ヴァージョンでおなじみの「カモナマイハウス」、さらに「八木節」へとカオス度が深まっていく。可愛い可愛い竹部さんが渚をおんぶするという無茶ぶりもおかしい。 そう。渚のハマり具合は言わずもがな。衣装もヘア&メイクも21世紀に反抗する美意識で貫かれた七変化なれど、それらに負けていない。

活弁士にして、映画監督、「ニュートーキョー」(作詞・作曲:横山剣/02年)のPVの演出も手がけた山田広野さんが登場し、新宿ゴールデン街から駆け付けたソワレさん、パリから飛んできたエルナ・フェラガ~モさんを呼び込み、渚と軽妙な応援トークを展開する。 続いて、渚が映画『ヨコハマメリー』(06)用にカヴァーした「伊勢佐木町ブルース」(オリジナル=歌:青江三奈/作詞:川内康範/作曲:鈴木庸一/68年)、「港町ブルース」(オリジナル=森 進一/作詞:深津武志/補作:なかにし礼/作曲:猪俣公章/69年)と、ロバート・ジョンソンに始まるブルーズではなく、淡谷のり子に代表される日本ならではのブルースの連打である。 幻聴ならぬ幻臭か。ハマの潮風の匂いにうっとりしていたら、なんと「ギター仁義」~「旅笠道中」~「名月赤木山」(インスト)と、股旅メドレーじゃあ~りませんか! これぞコマならではの趣向でござんす。

第1部のトリは待ってましたっ――内藤陳さんとトリオ・ザ・パンチ2008によるコント。ハードボイルドコメディアンとして今回の中では唯一のコマ劇場出演経験者であり、新宿ゴール デン街の名物バー<深夜+1>のマスターでもある陳さんが、渚の心意気に惚れて、まさかの友情+特別出演。体重30キロ台!? という噂も頷ける超スリムな肉体が見せてくれたシャープなガンさばきに感動。これぞ、はあどぼいるどだど~。一方、渚はカウガール姿で、まさかの「だまって俺について来い」(オリジナル=歌:植木等/作詞:青島幸男/作曲:萩原哲晶/64年)を歌いながらの登場。堂々たるコメディネンヌぶりを披露した。

3.三段せり、成功せり。
コモエスタ八重樫さんの粋なDJが流れる休憩を挟んで、第2部がスタート。清水靖晃さんの「テナーサキソフォンによるバッハ無伴奏チェロ組曲」が流れ、映像作家かわなかのぶろさん(<汀>の常連でもある)が新宿をテーマにした映像が流れる。 そして、『あなたにあげる歌謡曲 其の一』(05)のギターも素晴らしかった、高橋ピエールさんがソロを演奏し、礼服のような黒のドレスを着た渚が現われた。 「白い朝」は、渚が「新宿と若松孝ニさんに捧げた曲を」と、松石ゲル(名古屋在住のザ・シロップのリーダー)さんに作ってもらった歌とのこと。 そこに、若松監督が大きな深紅の薔薇の花束を抱えて登場した。う~ん、ダンディ。 若松作品といえば、『新宿マッド』(70)をはじめ、新宿で撮った映画が多い。山田広野さんの進行で、二人は新宿話に花が咲き、渚は監督に「ここは静かな最前線」を捧げる。 そう。『天使の恍惚』(72)で横山リエが歌い、印象深い歌だ。渚によるカヴァーは、監督の最高傑作『実録連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』(07)で流れた。 さらに、若松さんが、三上寛さんを呼び込む。若松さん、寛さん、渚と、東北生まれ新宿育ちが並ぶ。 寛さんは、「戦士の休息」と「夢は夜ひらく」を披露。圧倒的なパフォーマンスに会場は水を打ったように静まる。

ヘヴィ級なゲストの3人目は、はっぽんこと山谷初男さんだ。日本を代表する異端の役者なれど、寺山修司さんが丸ごと詞を書き下ろした『放浪詩集 新宿』(74)をはじめ味のあるレコードも発表している。この夜は、その名盤から「ジプシーローズに捧げる唄」、「菅原文太を見にゆくブルース」を歌ってくれた。 そういえば、『放浪詩集 新宿』の演奏は<はちみつぱい>だし。かわなかのぶひろさんは寺山さんの葬儀を仕切ったそうだし(と、<汀>でたまたま隣に座った僕は聞いたことがある)。11.4の新宿コマ劇場には、渚ようこマジックが頻出したのであった。

ヴァイオリンがせつない「おいとこ節」(インスト)が流れるも、空気を入れ換えるように、松石ゲルの名作「ゲバゲバ子守歌」へ。せりに乗って、渚が登場する。<デリシャスウィートス>もまたまた現われた。「土曜の夜、何かが起きる」(オリジナル=歌:黛ジュン/作詞:なかにし礼/作曲:鈴木邦彦/69年)のカヴァーで、さらに盛り上がる。

そして、晩年に渚が邂逅した阿久悠さんへのリスペクト・コーナーが始まった。 「二日酔い」(オリジナル=梓みちよ/作曲:森田公一/76年)、「本牧メルヘン」(オリジナル=鹿内孝/作曲:井上忠夫/72年)、遺作となった渚への書き下ろし「どうせ天国へ行ったって」(作曲:大山渉/07年)、今年8月に満を持してカヴァーした「舟歌」(オリジナル=歌:八代亜紀/作曲:浜圭介/79年)、「ブルースカイ ブルー」(オリジナル=西城秀樹/作曲:馬飼野康二/78年)と、たっぷり歌いまくる。 渚ゆうこ、ならぬ、渚ようこ。何かとコンセプチュアルな歌手と誤解されがちな彼女だが、今回、何より、渚は歌を大切にしている歌手なのだ、と当たり前のことを再確認できたのがうれしかった。

せりに乗ってクレイジーケンバンドの横山剣さんが登場! パッと会場が華やかになった。温度が一気に上がった。 楽曲は、「かっこいいブーガルー」(作詞・作曲:横山剣/01年)と、「新宿そだち」(オリジナル=大木英夫&津山陽子/作詞:別所透/作曲:遠藤実/67年)をサンドイッチした通称”かっこいいそだち”。ケンとヨーコの久々のデュエットは、イイネ! イイネ! イイネ!  エンディングは、イイネ!ポーズをした剣さんが乗ったテレビ台を、いつものCKBのステージとは違って、ガーチャンこと新宮虎児ではなく、渚さん自らいつもより余計に回しております。 時間というものは残酷なもので、最後の曲は剣先生が渚のためにプロデュースした「ニュートーキョー」(02)。横山剣の洗練された作詞術/作曲術を堪能して、幕が下りた。

4.渚は、コマ劇場に合わせたのではない。
アンコールは、渚が客席からスポットを浴びつつ登場。彼女のアルバム『HEY! YOU』(06年)から「哀愁のロカビリアン」(作詞:阿久悠/作曲:宇崎竜童/06年)を歌い上げる。 そして、コマ名物! 独楽よろしく回転する三段のせりの上に渚が立ち、「かもねぎ音頭」(オリジナル=歌:中川レオ/作詞:吉岡オサム/作曲:了 瑛貢/72年)~「ゲバゲバ子守歌」(インスト)に乗せて、メンバー&ゲスト紹介! 舞台狭しと、若松孝二、横山剣、三上寛、山谷初男、内藤陳とトリオ・ザ・パンチ2008……が和気藹々と並んでいる。渚ようこというワン&オンリーな存在なしには、あり得ない光景だ。

「歌謡曲と新宿へのやぶれかぶれのオマージュ」とは本公演のコピーだが、「昭和にワープ」する場を超え、渚ようこと同志による「かっこいい世界の創造」の域に達していた。そこに僕はモーレツに感動した。 「新宿見たけりゃ 今見ておきゃれ じきに 新宿 原になる」とは、ご存知! 唐十郎が大島渚監督作『新宿泥棒日記』(69)の中で吐く名セリフだ。『新宿ゲバゲバリサイタル』も、渚ようこにおける新宿コマ劇場へのレクイエムであり、彼女がコマ用に選曲から演出まで合わせたように、僕は、つい、現場で浅はかにも考えてしまった。 しかし、あの興奮の一夜から1ヶ月強が経ち、一から振り返ると、あの晩のセットリストは、渚のルーツ・ミュージックの確認と半生の集大成であり……。初めのMCにおける「コマの舞台に立っているのに、落ち着いている」的なコメントは、決してユーモアではなく、実感であったことがじわじわと判ってきた。 渚は、コマに自分に合わせたのではない。新宿コマ劇場が、渚ようこを優しく包んだのだ。


ごあいさつ:「新宿ゲバゲバリサイタル」大盛況で無事終えることが出来ました。

nag_17801.jpg 10.4(土)渚ようこの長年の夢であった新宿コマ劇場公演「新宿ゲバゲバリサイタル」が大盛況で無事終えることが出来ました。お忙しい中、足を運んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。思えば、一人勝手に「ゲバルト宣言」し自主公演を決めてしまってから、数々の人たちに支えられ、バンドのみなさん、スペシャルゲストの皆さん、スタッフのみなさん、協賛してくださった方々に助けられ、新宿の人達に背中を押され、見守られて本番を迎えました。やはりコマ劇場は‘聖地’でした。楽屋からステージに入る頭の上に灯りがともり、‘あなたの舞台の成功を祈る’と書いてあります。ステージ裏の人達の暖かさも感じました。エレベーターに乗ると手で扉を開けて係の人が「おめでとうございます。」と言ってくれました。これまで一年少しの間、数々の難題を乗り越えてきた嵐のような季節もどこかへ吹き飛んでしまい、胸がいっぱいの夢のような三時間のステージを楽しんでやることができました。不思議と緊張することもなく、歌が大好きな子供にかえったような素敵なワープをどうもありがとうございました。このエネルギーを次のステージへと繋げて行きたいと思っています。

渚ようこ

●川勝正幸さんによるコマ劇場レポート「その夜、新宿コマ劇場は渚ようこを優しく包んだ。 」掲載いたしました。

●ブログに随時、「ゲバゲバの季節~コマへの道」を更新していく予定です。
>>ブログ「新宿マドモアゼル死闘編II」へ

●川勝正幸さんが、TVブロス(10/25号)の連載でゲバゲバリサイタルについて書いて下さっています。題して「コマに、かっこいい世界を出現させた、渚ようこの細腕繁盛記。」必読です!

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Coming Soon!