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出演情報:宇野亜喜良さん構成・Project Nyx 第4回公演 「星の王子さま」 に出演します

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Project Nyx 第4回公演
「星の王子さま」

永久に気高く麗しく ぼくの星に咲くたった一輪の花よ

作:寺山修司
構成・美術:宇野亜喜良
演出:金守珍(新宿梁山泊)

第6回杉並演劇祭参加作品

Project Nyx(プロジェクト・ニクス)
元新宿梁山泊の広島かつらが06年に立ち上げたユニット。不朽の名作から知られざる傑作まで、忘却の彼方に漂うイメージに息を吹き込み、現代のパフォーマンスとして蘇らせる実験演劇ユニット。さまざまなジャンルのアーティストが出逢うことにより、演劇という枠を超え、音楽、舞踊、アートが融合した新たなエンターテインメントの創造を志す。第1回公演「かもめ或いは寺山修司の少女論」では、映画のはねた映画館で、映像、朗読、人形、演劇の融合を試み、いままでにない不思議な舞台空間を生み出した。

宇野 亜喜良 AKIRA UNO
1934年生まれ。名古屋市立工芸高校図案科卒業。カルピス食品工業広告課、日本デザインセンター、スタジオイルフィル、スタジオReを経てフリーになる。マックスファクターの広告、寺山修司の天井桟敷の宣伝美術、舞台美術を手がける。56年日宣美展で特選、60年日宣美展会員賞、92年赤い鳥挿絵賞ほか受賞。講談社出版文化賞挿絵賞、99年紫綬褒章受賞。主な出版物は『ル・シネマ』(マガジンハウス)、『宇野亜喜良の世界』(立風書房)、絵本『あのこ』(理論社)、『王さまのねこ』(文化出版局)、『あかるい箱』(マガジンハウス)など。近年では、コクーン歌舞伎の宣伝画や、ダンス+音楽舞台「上海異人娼館」、「美女と野獣」の芸術監督、Tファクトリープロデュース「毛皮のマリー」の衣装・美粧、タカイズミプロジェクト「Over The Rainbow・・・?~アリス的不完全穴ぼこ墜落論~」の美術・衣装など、舞台美術でも注目を集めている。

金 守珍 SUJIN KIM
蜷川スタジオを経て、唐十郎主宰「状況劇場」で役者として活躍。 蜷川と唐という「アングラ・小劇場」の代表とも言うべき演出家から直接に指導を受ける。その後、新宿梁山泊を創立。旗揚げより新宿梁山泊公演の演出を手掛ける。 テント空間、劇場空間を存分に使うダイナミックな演出力が認められている。97年にはオーストラリア国立演劇学校から「特別講師」として招かれ、世界に通用する演出家と評判を呼んだ。99年にはニューヨークで「少女都市からの呼び声」を公演。その後、コロンビア大学にて特別講師として、清水邦夫作「楽屋」を演出。89年「千年の孤独」で89テアトロ演劇賞受賞。93年「少女都市からの呼び声」で文化庁芸術祭賞受賞。98年「飛龍伝」で読売演劇大賞演出家賞受賞。また、演出以外にも、外部公演への出演、NHKドラマ、CM出演等、役者としても広く活躍している。01年、映画「夜を賭けて」にて初監督。02年全国公開され、第57回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人監督賞/2002年度第43回日本映画監督協会新人賞を受賞。

広島かつら KATSURA HIROSHIMA
青年座養成所を卒業後、新宿梁山泊に「青く美しきアジア」より参加。「新宿梁山泊版四谷怪談-十六夜の月」、ニューヨーク凱旋公演「少女都市からの呼び声」等で、メインをつとめる。98年、韓国観光公社CMにOL三人娘の一人として出演。00年にはアトリエ公演唐十郎作品「愛の乞食」でヒロイン・曼珠沙華を演じ好評を博す。04年に宇野亜喜良氏と出会い、宇野亜喜良氏の制作するコラボレーション舞台に魅せられ、06年、自らが企画・プロデュースする、実験演劇ユニット「Project Nyx」を立ち上げ活動を始める。

■星の王子さま ノート(寺山修司)
「何百万の星のどれかに咲いているたった一輪の星を眺めているだけでしあわせだ」とサン・テクジュペリの星の王子さまは言っている。だが「見えないものを見る」という哲学が、「見えるものを見ない」ことによって幸福論の緒(いと)口(ぐち)をつなごうとしているのだとしたら、私たちは「見てしまった」多くの歴史と、どのようにかかわらなければならないだろうか?

「大人になった星の王子さまは、何になると思う?」と問いかけるたびに、女学生たちはいやな顔をした。「星の王子さまは大人になんかならずに、永遠に王子さまのままでいる」と、彼女たちは思いこみたいことだろう。だが、星の王子さまの大人になってしまった無惨な姿はあちこちに見出される。浅草の銭湯の番台や、自衛隊宿舎や、大学の共闘会議や、ゲイバーの片隅に。そしてこうした「星の王子さま」を捨ててきた人たち、「見えるものを見てしまった」人たちが、もっとも深く現実原則と心的な力との葛藤になやみながら歴史を変えてゆく力になってゆくのである。私はこの戯曲で復讐をしたいと思った。「星の王子さま」にではなく、「星の王子さま」を愛読した私自身の少年時代に、である。私は、今やバオバブの木に棲む一人である。そして、夜になると出て行って花を食べるヒツジに化ける。

■あらすじ
装飾過多の西洋の売春宿を思わせるホテルロビー。オーマイパパ(年齢不詳の男装の麗人)とその娘点子(旅をし続ける少女)が、宿を求めやってくる。天体望遠鏡をのぞき、星を見張っているというウワバミは、この宿の女主人である。女中のヒツジ(白髪の少女)に連れられて点子が部屋へ入っていくと、オーマイパパは、ウワバミに自分たちの素性を語る。自分が男装をしているのは、変態でもおなべでもなく、父を亡くした点子のファザーコンプレックスの代用品であるという。迷い込んだ、二つのすい星に微笑むウワバミ。

星の王子さまを愛するあまり、恐怖の老処女となったウワバミは、点子に自分たちと同じように、星の王子さまになるように迫る。椅子に縛り付け、点子に襲いかかろうとするが、ヒツジに助けられる。だが、そのヒツジも、レズビアンであった。そして男装の麗人達が現れ、点子に襲いかかる。

一方、オーマイパパは、ホテルの一室で出会った、点燈夫の星(毛深き電気修理工)に男装を見抜かれ、押し倒されて快楽の底に落ちていく。その様子をきたならしい地獄と冷ややかに見つめるウワバミ。醜いものは見ようともせず、きれいなものだけを見続けようとするウワバミに、醜くともそれが現実、ありのままを素直に受け止めるべきと、対抗する点子。二つの論理が対立し、交錯した先には―――。

【キャスト】
広島かつら 山田ひとみ(劇団1980) 遠藤好(青年座) 倉田知美 川上史津子 野口和美(青蛾館) 村田弘美(万有引力) 吉野眞理 涌井歌織 大久保美和(劇団1980) 傳田圭菜 今村美乃

《スペシャルキャスト》 蘭妖子 渚ようこ フラワー・メグ 中山ラビ

《演奏・出演》 黒色すみれ

《人形遣い》 森田晋玄 森田美千香

【スタッフ】
照明 泉 次雄+ライズ
音響 N-TONE
振付 大川 妙子
映像 大須賀 博
ヘアデザイナー 伊藤 五郎(be・glee)
メイク 川村 和枝(P.bird)
舞台美術 宇野 亜喜良/野村 直子/百八竜
衣装 宇野 亜喜良/野村 直子/竹内陽子
宣伝美術 宇野 亜喜良/福田 真一

WEB制作 小池田芳晴(SHIMICOM DESIGN)

制作 Project Nyx

制作協力 JSK/新宿梁山泊/青蛾館

協力 九條今日子/森崎偏陸/be・glee/トゥインクル・コーポレーション/劇団1980/劇団青年座/yumehina/武人会/万有引力/汀/すみれの天窓/マダムメグ/ほんやら洞/Le Temps(ル・タン)/BIGFACE/ZOESTYLES/川村恭子/井上理香子/高田英悟/武隈梨恵/笹木明日香/張山玲美

協賛 株式会社ジュン/エム企画/暁設計

2/25 (水) 2/26(木) 2/27 (金) 2/28 (土) 3/1 (日)
  14:30   14:30 14:30
19:30 19:30 19:30 19:00  

■チケット料金
(2009年1月15日(木)発売開始) 全席自由・整理番号付き
前売 3,800円/当日4,000円
学生前売 2,800円/学生当日3,000円
(学生チケットは数に限りがございますので、お早めにご予約ください。)
※開場は開演の30分前。受付は開演の1時間前
※学生チケットは、当日受付にて学生証をご提示ください。
※開場時間が過ぎますと整理番号が無効となる場合がございますのでご了承ください。


【チケット取扱い】
チケットぴあ 0570-02-9999 (Pコード: 391-281 )  http://pia.jp/t
Project Nyx(プロジェクト・ニクス)  03-6312-7031
Project Nyx WEB予約 http://project-nyx.com
【問い合わせ】
Project Nyx(プロジェクト・ニクス)  03-6312-7031
http://project-nyx.com  E-Mail info@project-nyx.com


出演情報:宇野亜喜良さん構成・Project Nyx 第4回公演 「星の王子さま」 に出演します

詳細情報はこちらからご確認ください

aquirax_s.jpg Project Nyx 第4回公演「星の王子さま」
永久に気高く麗しく ぼくの星に咲くたった一輪の花よ–作:寺山修司
構成・美術:宇野亜喜良
演出:金守珍(新宿梁山泊)

第6回杉並演劇祭参加作品

会場:ザムザ阿佐谷
東京都杉並区阿佐谷北2-12-21
TEL:03-5327-7640
JR阿佐ヶ谷駅 北口より徒歩3分


2009年2月25日(水)~3月1日(日)
公演の時間はこちらよりご確認ください。
チケット:2009年1月15日(木)発売開始 全席自由・整理番号付き
前売 3,800円/当日4,000円
学生前売 2,800円/学生当日3,000円
(学生チケットは数に限りがございますので、お早めにご予約ください。)


【チケット取扱い】
チケットぴあ 0570-02-9999 (Pコード: 391-281 )  http://pia.jp/t
Project Nyx(プロジェクト・ニクス)  03-6312-7031
Project Nyx WEB予約 http://project-nyx.com
【問い合わせ】
Project Nyx(プロジェクト・ニクス)  03-6312-7031
http://project-nyx.com  E-Mail info@project-nyx.com


コマ劇場レポート「その夜、新宿コマ劇場は渚ようこを優しく包んだ。 」

その夜、新宿コマ劇場は渚ようこを優しく包んだ。
文:川勝正幸

1.伝え聞く、大いなる助走。
2008年10月4日、渚ようこ新宿コマ劇場公演『新宿ゲバゲバリサイタル』へ行った。 劇場のオープンは1956年で、僕と同い歳なれど、52年近い人生の中で2度目のコマだ。前回はYMO『WINTER LIVE』(81)であった。彼らは、北島三郎(おやじ)らが特別公演を開く「演歌の殿堂」へ、テクノポップが侵入する異化効果を狙っていた。

しかし、渚は、ジャッキー吉川が経営する六本木(ギロッポン)のクラブの門を叩き、挫折することから「平成の歌謡歌手」としてのキャリアをスタートした女だ。しかも、03年、新宿ゴールデン街にバー<汀(なぎさ)>を出し、ママとなる。似合い過ぎます! とはいえ、デビュー12周年にあたり、念願のコマ公演を、年末で閉館してしまう前に滑り込みで、レコード会社などに頼らずに渚個人で、インディペンデントで開催すると聞くと、期待だけでなく、不安もいっぱいなわけで。

2.誰もが、「昭和にワープ!」だ。
心配は杞憂であった。 昭和歌謡経由とおぼしきヤングあり、新宿ゴールデン街人脈のナイスミドルあり、国籍性別不明なピープルあり。ロビーは老若男女ドラアグクイーンで足の踏み場もなく、ところどころ覗く、煮染めたような朱色の絨毯がなんか落ち着く。

早めにSS席1万円(記念グッズつき)を予約したおかげで、ステージが驚くほど近い。 サミー前田のキャッチーなDJで場内があたたまったところで、緞帳が上がり、会場は「昭和にワープ!」した。 もはや渚の持ち歌と言っても過言ではない「新宿マドモアゼル」(オリジナル=歌:チコとビーグルス/作詞:橋本淳/作曲:筒美京平/69年)を踊る<デリシャスウィートス>は、振付だけでなく、体型そのものが昭和30年代のニュース映像から飛び出てきたかのよう。 バンドは一見ノーマルかと思いきや、バンマスの渡辺勝さんはワウでビートを刻んでいく。元・<はちみつぱい>というキャリアからの予想を裏切る、ロック魂・ミーツ・歌謡曲なグルーヴに身も心も揺さぶられる。

お次は、「新宿の女」(オリジナル=歌:藤圭子/作詞:石坂まさを/作曲:みずの稔・石坂まさを/69年)のカヴァー。コマに敬意を表しての、新宿繋がりか。 「コマの舞台に立っているのに、落ち着いている」的なのMCに、渚より緊張していた観客の肩の力も抜ける。 そして、渚が”平成サイケ歌謡の女王”の名を欲しいままにした初期の代表曲「サイケでいこう」(作詞・作曲:あいさとう/96年)、ハプニングス・フォーの日本語カヴァーでおなじみの「アリゲーターブーガルー」(オリジナル=ルー・ドナルドソン/67年)とステージのサイケデリック度が増量したと思いきや、江利チエミの日本語ヴァージョンでおなじみの「カモナマイハウス」、さらに「八木節」へとカオス度が深まっていく。可愛い可愛い竹部さんが渚をおんぶするという無茶ぶりもおかしい。 そう。渚のハマり具合は言わずもがな。衣装もヘア&メイクも21世紀に反抗する美意識で貫かれた七変化なれど、それらに負けていない。

活弁士にして、映画監督、「ニュートーキョー」(作詞・作曲:横山剣/02年)のPVの演出も手がけた山田広野さんが登場し、新宿ゴールデン街から駆け付けたソワレさん、パリから飛んできたエルナ・フェラガ~モさんを呼び込み、渚と軽妙な応援トークを展開する。 続いて、渚が映画『ヨコハマメリー』(06)用にカヴァーした「伊勢佐木町ブルース」(オリジナル=歌:青江三奈/作詞:川内康範/作曲:鈴木庸一/68年)、「港町ブルース」(オリジナル=森 進一/作詞:深津武志/補作:なかにし礼/作曲:猪俣公章/69年)と、ロバート・ジョンソンに始まるブルーズではなく、淡谷のり子に代表される日本ならではのブルースの連打である。 幻聴ならぬ幻臭か。ハマの潮風の匂いにうっとりしていたら、なんと「ギター仁義」~「旅笠道中」~「名月赤木山」(インスト)と、股旅メドレーじゃあ~りませんか! これぞコマならではの趣向でござんす。

第1部のトリは待ってましたっ――内藤陳さんとトリオ・ザ・パンチ2008によるコント。ハードボイルドコメディアンとして今回の中では唯一のコマ劇場出演経験者であり、新宿ゴール デン街の名物バー<深夜+1>のマスターでもある陳さんが、渚の心意気に惚れて、まさかの友情+特別出演。体重30キロ台!? という噂も頷ける超スリムな肉体が見せてくれたシャープなガンさばきに感動。これぞ、はあどぼいるどだど~。一方、渚はカウガール姿で、まさかの「だまって俺について来い」(オリジナル=歌:植木等/作詞:青島幸男/作曲:萩原哲晶/64年)を歌いながらの登場。堂々たるコメディネンヌぶりを披露した。

3.三段せり、成功せり。
コモエスタ八重樫さんの粋なDJが流れる休憩を挟んで、第2部がスタート。清水靖晃さんの「テナーサキソフォンによるバッハ無伴奏チェロ組曲」が流れ、映像作家かわなかのぶろさん(<汀>の常連でもある)が新宿をテーマにした映像が流れる。 そして、『あなたにあげる歌謡曲 其の一』(05)のギターも素晴らしかった、高橋ピエールさんがソロを演奏し、礼服のような黒のドレスを着た渚が現われた。 「白い朝」は、渚が「新宿と若松孝ニさんに捧げた曲を」と、松石ゲル(名古屋在住のザ・シロップのリーダー)さんに作ってもらった歌とのこと。 そこに、若松監督が大きな深紅の薔薇の花束を抱えて登場した。う~ん、ダンディ。 若松作品といえば、『新宿マッド』(70)をはじめ、新宿で撮った映画が多い。山田広野さんの進行で、二人は新宿話に花が咲き、渚は監督に「ここは静かな最前線」を捧げる。 そう。『天使の恍惚』(72)で横山リエが歌い、印象深い歌だ。渚によるカヴァーは、監督の最高傑作『実録連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』(07)で流れた。 さらに、若松さんが、三上寛さんを呼び込む。若松さん、寛さん、渚と、東北生まれ新宿育ちが並ぶ。 寛さんは、「戦士の休息」と「夢は夜ひらく」を披露。圧倒的なパフォーマンスに会場は水を打ったように静まる。

ヘヴィ級なゲストの3人目は、はっぽんこと山谷初男さんだ。日本を代表する異端の役者なれど、寺山修司さんが丸ごと詞を書き下ろした『放浪詩集 新宿』(74)をはじめ味のあるレコードも発表している。この夜は、その名盤から「ジプシーローズに捧げる唄」、「菅原文太を見にゆくブルース」を歌ってくれた。 そういえば、『放浪詩集 新宿』の演奏は<はちみつぱい>だし。かわなかのぶひろさんは寺山さんの葬儀を仕切ったそうだし(と、<汀>でたまたま隣に座った僕は聞いたことがある)。11.4の新宿コマ劇場には、渚ようこマジックが頻出したのであった。

ヴァイオリンがせつない「おいとこ節」(インスト)が流れるも、空気を入れ換えるように、松石ゲルの名作「ゲバゲバ子守歌」へ。せりに乗って、渚が登場する。<デリシャスウィートス>もまたまた現われた。「土曜の夜、何かが起きる」(オリジナル=歌:黛ジュン/作詞:なかにし礼/作曲:鈴木邦彦/69年)のカヴァーで、さらに盛り上がる。

そして、晩年に渚が邂逅した阿久悠さんへのリスペクト・コーナーが始まった。 「二日酔い」(オリジナル=梓みちよ/作曲:森田公一/76年)、「本牧メルヘン」(オリジナル=鹿内孝/作曲:井上忠夫/72年)、遺作となった渚への書き下ろし「どうせ天国へ行ったって」(作曲:大山渉/07年)、今年8月に満を持してカヴァーした「舟歌」(オリジナル=歌:八代亜紀/作曲:浜圭介/79年)、「ブルースカイ ブルー」(オリジナル=西城秀樹/作曲:馬飼野康二/78年)と、たっぷり歌いまくる。 渚ゆうこ、ならぬ、渚ようこ。何かとコンセプチュアルな歌手と誤解されがちな彼女だが、今回、何より、渚は歌を大切にしている歌手なのだ、と当たり前のことを再確認できたのがうれしかった。

せりに乗ってクレイジーケンバンドの横山剣さんが登場! パッと会場が華やかになった。温度が一気に上がった。 楽曲は、「かっこいいブーガルー」(作詞・作曲:横山剣/01年)と、「新宿そだち」(オリジナル=大木英夫&津山陽子/作詞:別所透/作曲:遠藤実/67年)をサンドイッチした通称”かっこいいそだち”。ケンとヨーコの久々のデュエットは、イイネ! イイネ! イイネ!  エンディングは、イイネ!ポーズをした剣さんが乗ったテレビ台を、いつものCKBのステージとは違って、ガーチャンこと新宮虎児ではなく、渚さん自らいつもより余計に回しております。 時間というものは残酷なもので、最後の曲は剣先生が渚のためにプロデュースした「ニュートーキョー」(02)。横山剣の洗練された作詞術/作曲術を堪能して、幕が下りた。

4.渚は、コマ劇場に合わせたのではない。
アンコールは、渚が客席からスポットを浴びつつ登場。彼女のアルバム『HEY! YOU』(06年)から「哀愁のロカビリアン」(作詞:阿久悠/作曲:宇崎竜童/06年)を歌い上げる。 そして、コマ名物! 独楽よろしく回転する三段のせりの上に渚が立ち、「かもねぎ音頭」(オリジナル=歌:中川レオ/作詞:吉岡オサム/作曲:了 瑛貢/72年)~「ゲバゲバ子守歌」(インスト)に乗せて、メンバー&ゲスト紹介! 舞台狭しと、若松孝二、横山剣、三上寛、山谷初男、内藤陳とトリオ・ザ・パンチ2008……が和気藹々と並んでいる。渚ようこというワン&オンリーな存在なしには、あり得ない光景だ。

「歌謡曲と新宿へのやぶれかぶれのオマージュ」とは本公演のコピーだが、「昭和にワープ」する場を超え、渚ようこと同志による「かっこいい世界の創造」の域に達していた。そこに僕はモーレツに感動した。 「新宿見たけりゃ 今見ておきゃれ じきに 新宿 原になる」とは、ご存知! 唐十郎が大島渚監督作『新宿泥棒日記』(69)の中で吐く名セリフだ。『新宿ゲバゲバリサイタル』も、渚ようこにおける新宿コマ劇場へのレクイエムであり、彼女がコマ用に選曲から演出まで合わせたように、僕は、つい、現場で浅はかにも考えてしまった。 しかし、あの興奮の一夜から1ヶ月強が経ち、一から振り返ると、あの晩のセットリストは、渚のルーツ・ミュージックの確認と半生の集大成であり……。初めのMCにおける「コマの舞台に立っているのに、落ち着いている」的なコメントは、決してユーモアではなく、実感であったことがじわじわと判ってきた。 渚は、コマに自分に合わせたのではない。新宿コマ劇場が、渚ようこを優しく包んだのだ。